テレマティクスがインテリジェンスに変わるとき:AI主導のコネクティビティがもたらすセキュリティへの影響

2026年2月19日
CyberThreat Research Lab
テレマティクスがインテリジェンスに変わるとき:AI主導のコネクティビティがもたらすセキュリティへの影響

自動車脅威リサーチャー、Rolando Doromal Jr. 著

AIを活用したテレマティクスは、モビリティのエコシステム全体に確かな利益をもたらすことが期待されています。しかし、ソフトウェア定義型自動車(SDV)のアーキテクチャにおいて、テレマティクスが単なるデータの伝送経路から運用上の権限を持つものへと進化するにつれて、サイバーセキュリティの議論は根本的に変化しています。

そのリスクは、もはやデータの漏えいに限定されません。車両群規模での自動化された運用への影響にまで及んでいます。

UN R155ISO/SAE 21434などの規制枠組みの下で、サイバーセキュリティは現在、型式指定、市場へのアクセス、およびブランドの信頼に直結する体制上の義務となっています。テレマティクスはもはや単なるコネクティビティ機能ではなく、車両の挙動を形成するロジックに組み込まれつつあります。

テレマティクスのサイバーセキュリティ:決してリスクフリーではない歴史

テレマティクスは、その初期の導入時から、車両とバックエンドのエコシステムをつなぐ橋渡しとしての役割を果たしてきました。

テレマティクス制御ユニット(TCU)は、車載ネットワークをクラウドプラットフォーム、車両群管理システム、およびモバイルアプリケーションに接続します。TCUは車両のテレメトリ、GPSデータ、診断情報を送信し、リモートコマンドやOTA(Over-The-Air)による設定の更新を可能にします。

このアーキテクチャは、運用の可視性と拡張性を提供します。一方で、攻撃対象領域を車両そのものを越えて拡大させることにもなります。

業界の調査では、この未解消のリスクが繰り返し実証されています。Tencent Keen Security Labのセキュリティ調査結果では、車両のコネクティビティの仕組みにおける悪用可能な弱点が明らかになり、バックエンドサービスやテレマティクスインターフェースが、より広範な車両エコシステムへの侵入経路になり得ることが浮き彫りになりました。

これらの調査結果は特殊な事例ではありません。コネクティビティが本質的に、車両、クラウドシステム、API、およびユーザーインターフェース間に信頼関係を構築するという、仕組み上の現実を反映しています。

コネクティビティと攻撃にさらされるリスクは切り離すことができません。重要な問題は、テレマティクスがリスクをもたらすかどうかではなく、そのリスクがどのように拡大するかということです。

SDVにおける進化:AIがテレマティクスを運用上の権限へと変える

AIはテレマティクスの役割を根本から変化させます。かつて、テレマティクスは生データを送信するだけでした。現在では、データを解釈し、予測し、結果に影響を与えます。

機械学習モデルにより、予知保全、ルートの最適化、ドライバーの行動分析、および自動化された車両群の調整が可能になります。これらのシステムは、人間の直接的な確認なしに、メンテナンスのスケジュール設定、運用の優先順位付け、およびシステムの応答を決定するようになっています。

この変化は確かな運用上の利益をもたらすと同時に、脆弱性が及ぼす影響の性質をも変化させます。

従来のテレマティクスの欠陥は、車両情報を漏えいさせる可能性がありました。AIが統合されたSDV環境においては、同じ欠陥が数千台の車両全体の自動化された運用結果に同時に影響を及ぼす可能性があります。

脆弱性の拡大:既存の弱点が車両群全体に影響を及ぼす起点となる

AIが全く新しいリスクのカテゴリーをもたらすわけではありません。AIは、既存のリスクがもたらす結果を拡大させるのです。

VicOneが公開したリサーチ記事「車両管理システムを脅かす認証とAPIの脆弱性について」では、ユーザー名とともにURIパラメーターで平文のパスワードを送信することや、暗号化が不十分なログインメカニズムなどの脆弱な認証手法が、重要なテレマティクスデータへの不正アクセスをどのように可能にしたかを明らかにしました。

リサーチャーは以下のデータにアクセスすることが可能でした。

  • GPS座標
  • 車速
  • イグニッションの状態
  • オドメーターの数値
  • デバイスの識別子

これらの弱点は主に、車両群管理のバックエンドシステムおよびAPIで発見されました。これらの環境は、複数の車両からテレマティクスデータを集約し、Webインターフェースやモバイルインターフェースに運用機能を公開するものです。

適切な認証制御と暗号化通信がなければ、攻撃者は機密データを抽出したり、車両情報を操作したりする可能性があります。その結果として起こり得る事態は、プライバシーの侵害にとどまりません。

  • 車両群全体における運用の混乱
  • 操作されたデータやダウンタイムによる経済的損失
  • UN R155に基づく規制への違反
  • 風評被害
  • 物理的な安全性への影響

AI主導のエコシステムにおいて、これらのリスクはさらに増大します。予測モデルが侵害されたデータ入力に依存している場合、欠陥のある出力が連鎖し、誤ったメンテナンスの優先順位付け、車両群の誤ったルート設定、または不適切な自動応答につながる可能性があります。API認証の欠陥として始まった問題が、広範囲にわたる運用上の影響へと発展する可能性があるのです。

脆弱性はもはや通信チャネルのみに存在するわけではありません。脆弱性はシステムのロジックを通じて伝播します。

SDV時代のセキュリティ:コネクティビティの枠を超えた対策

従来の自動車向けサイバーセキュリティは、ECUやネットワーク通信の保護に焦点を当てていました。この基盤は依然として不可欠ですが、インテリジェントでAIに対応したSDVアーキテクチャにおいては、もはや十分ではありません。

組織は以下の項目を保護・確保する必要があります。

  • 車両からクラウドへのパイプライン全体における、エンドツーエンドのデータ整合性
  • バックエンドインフラストラクチャーとAPIの認証
  • AIモデルのガバナンス、検証、およびライフサイクル管理
  • 車両群全体に対する継続的な監視と異常検知

このアプローチは、ISO/SAE 21434が意図するライフサイクルや、UN R155のサイバーセキュリティ管理システム(CSMS)枠組みの下で要求される体制上のガバナンスと直接的に合致するものです。規制当局は、事後対応的なパッチ管理ではなく、車両とクラウドの両方の環境全体にわたる、実証可能なリスクの可視性をますます求めています。

車両群の保護:脅威の検知から運用上のレジリエンスへ

AIが統合されたテレマティクスシステムを保護するには、脆弱性の修復以上のことが求められます。車両およびクラウドの両領域にまたがる、検知、脅威インテリジェンス、および体系化された対応を網羅する、連携したセキュリティモデルが必要になります。

先見の明のある製造業者は、以下を実現するエコシステム全体のアプローチを採用しています。

  • 攻撃者の手口を、自動車特有の脅威フレームワークに対応づける
  • テレマティクスおよびバックエンド環境における異常な挙動を継続的に監視する
  • 車載テレメトリをクラウドの脅威インテリジェンスと相関させる
  • 車両群全体の運用におけるリスクの観点から、脆弱性の影響を評価する
  • 調査結果をサイバーセキュリティ管理システム(CSMS)のプロセスに統合する

脆弱性インテリジェンス、リアルタイムの監視、および体系化された運用上の対応を組み合わせることで、組織は影響が拡大する前に、新たな攻撃パターンを可視化することができます。

AIに対応したSDVのエコシステムにおいて、レジリエンスは孤立した制御によって達成されるものではありません。
レジリエンスは、テレマティクスのバリューチェーン全体にわたる継続的な可視性を通じて達成されます。

結論:インテリジェンスはSDVのイノベーションとリスクの双方を加速させる

テレマティクスは、車両を外部システムに接続するために設計されました。AIはこれを、SDVエコシステムに組み込まれた運用上の乗数へと変容させます。運用上の価値は大きいものの、悪用された脆弱性は急速に拡大し、車両群全体の混乱につながる可能性があります。

インテリジェントなコネクテッドカーの時代において、テレマティクスのセキュリティはもはやデータのみを保護するものではありません。車両群、市場、および規制管轄区域の全体にわたって、自動化された車両の挙動の完全性を守ることが求められています。

モビリティの未来はインテリジェントなコネクティビティによって定義され、市場におけるリーダーシップは、そのインテリジェンスがどれほど安全に設計され、検証され、そして継続的にガバナンスを効かせられるかによって定義されるでしょう。

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